なんとかしなくちゃ One Pair of Hands

One Pair of HandsOne Pair of Hands

翻訳「なんとかしなくちゃ」(絶版かも)


この前の妄想シラバスを組み立てていたときに、読ませるテキストに上げていた随筆。
これは、モニカ・ディケンズというあのディケンズの孫娘にあたる作者の初めての作品。アッパーミドルの出身なのに、何かおもしろい経験をしたいからといってCook General(家庭の雑用する料理人)としていろいろな家ではたらいた体験をまとめたもの。

体験の多くは、使用人が彼女ひとりという状態の家に仕事をしに行くという物だが、上流階級のお屋敷にも一度行った。雇い主達の様子やそこではたらく使用人達の様子を、おもしろおかしく描写している。

確かになかなかおもしろく、しかも当時のメイド事情も分かっていいのだが、読んでいてちょっと気に入らないのが、彼女の基本的には「私は本当は労働者階級じゃないモンね」という感じの態度だ。

彼女は仕事がいやになると自宅に帰ってきて、そこの「お嬢様」でいられるベットで眠り、その使用人として貯めたお金をぱーっと使ってしまうのだ。その自らの態度をちゃんと客観的に見る目もそこにはあるのだが、やっぱりちょっとね。

こんな使用人を雇ったばかりに随筆という形で発表されてしまう人々や、同じ働く仲間と思っていた同僚に、おもしろおかしく書かれてしまう同僚達に同情してしまう。